油汚染の鳥類救護について

1997年1月2日に、日本海で起きたロシア船ナホトカ号の重油流出事故は、石川、 福井両県を始め日本海沿岸の各地に多大な被害をもたらしました。

それは、海でくらす鳥たちにも重大な影響を与えました。また、野生動物だけではなく、その海の水を使っている水族館の飼育動物にも影響を与えました。

これらの野生動物、動物園水族館の飼育動物に対して、日本動物園水族館協会は、獣医師、飼育技術者のボランティアとしての派遣をおこないました。

日本動物園水族館協会では、船舶などから の油流出、地震などの災害により被害を受けた野生動物の救護に、今後とも協力をしていきます。

日本近海で発生した主な船舶事故(平成14年度)


事故日 場所 船種 事故内訳
2002/3/31 隠岐島南東 貨物船「アイガー号」 沈没
2002/6/5 小豆島沖東方 貨物船「眉山丸」 沈没
2002/6/23 北海道えりも町庶野漁港沖 漁船「第21亀宝丸」 座礁
2002/7/5 三重県阿児町安乗崎灯台沖8.5㎞遠州灘 韓国船籍タンカー「ウー・リョン」・
タイ船籍コンテナ船「ラタン・シダ」
衝突
2002/7/25 鹿児島県志布志湾 パナマ船籍貨物船「コープベンチャー」 座礁
2002/8/8 静岡県御前崎沖南東5.5㎞ 韓国船籍貨物船「サントラスト」・
砂利運搬船「第2広洋丸」
衝突・
沈没
2002/8/12 唐津市神集島沖 漁船・セメントタンカー 衝突
2002/10/1 伊豆大島 バハマ船籍運搬船 座礁
2002/10/5 静岡県南伊豆町石廊崎灯台沖南西19km ケミカルタンカー「栄和丸」・パナマ船籍コンテナ船「エバーリアード」 衝突・
沈没
2002/12/5 茨城県日立港沖 北朝鮮船籍貨物船「チルソン号」 座礁
2003/2/17 静岡県伊豆半島爪木崎沖 砂利運搬船「興洋丸」 座礁

海外の主な大きな事故


事故日 場所 船種 事故内訳
2002/10/6 イエメン沖 フランス船籍原油タンカー「ランブール号」 爆発・炎上
2002/11/3 スペイン・ガリシア地方沿岸 オイルタンカー「プレステージ」 沈没
2002/12/15 ベルギー沖 自動車運搬船「トリコロール」 衝突・座礁

ナホトカ号被害

1997年1月2日に、日本海で重油流出事故を起こしたナホトカ号のことは、よくご存じと思います。

その時には、野生の鳥類:オオハム、アカエリカイツブリ、ウミスズメなどにたくさんの被害が出ました。

その鳥たちには、福井県、石川県の 関係者の救護活動が行われ、野鳥の会などの協力により北海道で放鳥できた鳥たちもいました。

日本動物園水族館協会では、中部、関西の動物園水族館を中心にして、獣医師、飼育係員をボランティアとして石川県、福井県に派遣し、救護活動を支援しました

ここでのリハビリ後、福井県自然保護センターに移動し空路北海道ウトナイ湖サンクチュアリで健康状態を確認し、リハビリ後日本海で放鳥された。

左写真:リハビリ中のハジロカイツブリ(柴田獣医科)

ボランティア活動の記録


福井県
活動場所 柴田獣医科(福井市内) ・福井県家畜保健衛生所
活動内容 汚染鳥類の引き取り、洗浄、リハビリ
活動期間 1月10日~2月8日
活動人数 毎日2~6名、延べの合計119名。
参加団体 福井市獣医師会。
日本野鳥の会福井県支部  
一般のボランティア
日本動物園水族館協会 その他
石川県
活動場所 石川県野鳥保護センター(金沢市内)
活動内容 汚染鳥類の引き取り、洗浄、リハビリ
活動期間 1月12日~1月31日
活動人数 毎日2~5名、延べの合計42名。
参加団体 石川県野鳥保護センター
日本野鳥の会石川県支部
一般のボランティア
日本動物園水族館協会 その他

動物園水族館被害

野生傷病鳥獣等の保護受付について


飼育水の油汚染による被害を避けるために、移動作業中のイルカ。(越前松島水族館)

日本海での重油汚染は、船首が座礁した福井県三国町にある越前松島水族館の飼育用海水にまでおよびました。

この重油汚染からの避難のため、日本動物園水族館協会加盟の水族館は、飼育中のイルカ頭14頭を緊急に受け入れました。

イルカの移動


実施日時 1月18日
移動場所 神戸市須磨海浜水族園(兵庫県)

のとじま水族館(石川県)

南知多ビーチランド(愛知県)

下田水族館(静岡県)

伊豆三津シーパラダイス(静岡県)
2頭(ハンドウイルカ)

3頭(カマイルカ)

3頭(ハンドウイルカ)

2頭(ハンドウイルカ)

4頭(カマイルカ)

輸送中のトラックの中で

避難先で・・・
南知多ビーチランド)

避難が終了し
もとのプールへ
越前松島水族館

特に、生後間もない子供のイルカの輸送は初めての経験でしたので、慎重におこなわれました。みんなの努力で、1頭の被害もなく避難し、6月10日には無事に越前松島水族館に戻ることができました。

汚染鳥類の洗浄

油で汚染された鳥類の死因。


1.油を飲み込むことによる消化器障害。

2.油が羽毛にしみ込むことによる体温低下。

3.油が羽毛に付着し、撥水不能となることによる溺死。

鳥類救護の手順


1.保護された鳥の記録(保護場所、日時、種類など)

2.健康状態の把握

3.体内の油の除去

4.付着している油の除去

5.野生に戻すためのリハビリ

6.放鳥

洗浄の様子


洗面器などに湯を入れ、
洗剤を 溶かして準備する。

翼の内側も油が
残らないように
洗剤をつけながら洗います。

洗剤が残らない様に
ていねいにすすぎをする。

ペーパータオルなどで水気をふき取る。

箱に入れてドライヤーで乾燥する。

脚を痛めないようにネットの上におく。

鳥たちは、この洗浄作業で肉体的にも精神的にも大きなストレスを受けます。軽減するために、洗浄作業は体力の回復を待ってからおこなわれます。

そして、 目の保護のため油性の目薬の点眼、呼吸の確保、作業のスピードアップなどに気を使います。