動物園水族館雑誌文献

第44回水族館技術者研究会

発行年・号 2001-42-02
文献名 第44回水族館技術者研究会
所属
執筆者
ページ 57〜65
本文 第44回水族館技術者研究会

Ⅰ.開催日時:平成12年2月8日(火),9日(水)
Ⅱ.開催場所:碧南海浜水族館・衣浦グランドホテル
Ⅲ.参加者:総裁殿下,55園館88名,会長,会友1名,維持3団体8名,事務局2名
Ⅳ.研究発表:口頭発表20題,ポスター発表7題
Ⅴ.宿題調査研究報告:水族館における輸入魚類の実態
調査(名古屋港水族館)
Ⅵ.懇談事項:
1)次期宿題調査研究のテーマについてテーマ「水
族館における初期餌料について」(碧南海浜水族館)
2)研究会事務局からの連絡
3)次期開催園館について
平成12年度サンシャイン国際水族館
平成13年度近畿ブロック
Ⅶ.施設見学:碧南海浜水族館
第44回水族館技術者研究会発表演題および要旨
印は演者
〔口頭による発表〕

1.和歌山県加茂川の魚類相の季節変化:○平嶋健太郎(和歌山県立自然博物館)
和歌山県立自然博物館周辺の魚類相調査のため,和歌山県海草郡下津町加茂郷の加茂川河口域で,1999年2月から毎月,大潮の昼夜それぞれの干潮時に投網とタモアミを用いて魚類採集を行った.
この結果,20科49種1,921個体(2000年1月31日現在)を採集し,これらの魚類を生活史ごとに区分すると,周縁性魚類が全採集種数の72.9%,両側回遊魚が12.5%,降河回遊魚が2.1%,純淡水魚が10.4%を占めた.
出現個体数の多い上位5種はヒナハゼ(N=367),ボラ(N=300),セスジボラ(N=173),ヒメハゼ(N=156),ヒイラギ(N=133)で,全個体数の58%を占めた.このうち,セスジボラとヒイラギは,主な出現期間が2~3ヶ月間と短く,河口域を一時的に利用している事が示唆された.ヒナハゼとヒメハゼは,採集個体の各月の体長変化から,ほぼ一生を加茂川河口域で送っていることが考えられた.また,この2種は昼間より夜間に多く現れ,このような傾向はハゼ科魚類で多くみられた.

2.アクアライブショーの解説によって得られた入館者の反応:○秀野真理,森  徹(海の中道海洋生態科学館)
海の中道海洋生態科学館では1995年4月の増築オープン以来,解説活動の一貫として,アクアライブショーを行っている.このショーはパノラマ大水槽(水量1400㎥)に水中テレビカメラと通話装置を装備したダイバーが潜水し,観客側の解説員と対話しながら,映像と音声で収容生物の解説を行うものである.
またこのショーでは,観客の参加性を高めるためにダイバーへのリクエストや質問を受け付けている.さらにこれらの会話や解説内容は,音声のミキシング担当者が1997年3月より毎回記録している.
この記録は,より精度や質の高い解説を行うためだけでなく,これらのデータを分析することでショーに対する観客の要望を探ることができる.また,ショーを教育活動として位置づけている館側と,娯楽性を期待する入館者側との認識差を縮めるための参考にすることができる.
これらの記録を分析した結果,入館者のダイバーに対する要望は,①詳細な説明を問う(知識的要求),②形や構造への興味(視覚的要求),③生物の行動への興味(行動的要求)の3つに分けられることができた.さらにこの記録の分析を深め,より入館者が楽しみながら学ぶことのできる運営や,リピーターのためにマンネリ化しない幅広い内容へと高める一助にしたいと考える.

3.ボタンエビの育成と放流:○毎原泰彦(東海大学海洋科学博物館)
ボタンエビPandalus nipponensisは日本固有種で,福島県から鹿児島湾の太平洋沿岸の水深100~480mに分布する事が知られている(Komai,1999).駿河湾では20年以上前までは年間50tもの漁獲高があり高値で取引されていたが,資源の枯渇により1979年以後エビ籠での操業は禁漁となり,未だ資源の回復は認められていない,当館では1996年から本種の繁殖育成を行い,その一部は現在置水槽(水量約400ℓ,水温約12℃)に展示中である.
1999年2月18日には静岡県焼津市小川港の沖合い約5km水深300mに,孵出後約1年(体長5~6cm)の子エビ300尾を放流した.その内50尾にはナイロン製の手術用縫合糸を付け再捕の際の目印とし,漁業者に周知した.さらに2000年の放流に向けて1999年4月2日には蒲郡市竹島水族館から7尾(頭胸甲長38.2~41.1mm)の抱卵雌の提供を受け,飼育を開始したところ,4月2日~5月4日までに3,311尾が孵出し,以後水量約1,000ℓの水槽(水温約12℃)で育成を行った.その結果,1999年7月には全長平均32.6mm,頭胸甲長平均6.6mm,体重平均0.3g,生残率53.4%,11月には全長平均56.2mm,頭胸甲長平均11.1mm,体重平均1.5g,生残率24.0%となり,2000年1月には全長平均77.9mm,頭胸甲長平均15.1mm,体重平均3.4gに成長し,生残率は15.9%であった.

4.アカシマシラヒゲエビの繁殖および育成について:○吉中敦史(登別マリンパークニクス)
アカシマシラヒゲエビLysmata amboinensisは,モエビ科ヒゲナガエビ属に属する体長60mm程のエビで,大型魚類等の体表や口中を掃除するクリーナーシュリンプとして知られている.
当館では,1992年2月より本種の展示を始め,これまでにたびたび幼生の孵出を確認している.今回,1998年7月20日に新たに購入した個体が,同年8月1日に抱卵,その18日後に約200個体の幼生の孵出が確認された.そこで幼生を別の容器に移して育成を開始した.
幼生の育成は,初めの約4ヶ月間は30ℓのパンライト水槽を水温24℃設定の水槽にウォーターバスにし,弱い通気を行い,毎日1/3程度の換水,同時にアルテミアArtemia salinaの孵化幼生を与えた.以後はプラスチック製のカゴ(48×36×16cm)に移し,水温を26℃設定と
し,冷凍アミエビ,アサリのミンチを与えていたところ,残存していた3個体のゾエア幼生(ゾエア期数不明)のうち,1個体が孵出136日目にメガロパ期幼生となり,さらに孵出144日目に稚エビへと変態した.
稚エビは孵出189日目に死亡した.死亡時の頭胸甲長は10.8mm,体長は29.2mmであった.死因は脱皮の失敗であると思われる.なお,他の2個体のゾエア幼生は,変態することなく死亡した.

5.キューバ固有のカタツムリの飼育:○安永 正,松戸利久(サンシャイン国際水族館)
1999年の7月より館内特別展示として「キューバの生き物たち」を開設している.この展示に際して,現地での調査の後に持ちかえった生物は,哺乳類,鳥類,両生類,爬虫類,魚類の他にキューバ固有種であるカタツムリのPolymitapictaの49個体(平均殻径24.6mm,殻高21.4mm)を含め計16種162点であった.Polymita pictaは,腹足綱柄眼目Fruticicolidaeに属し,美しい殻を持つことから装飾,民芸品として乱獲が進み,絶滅の危機に瀕している種である.
本種は,柑橘系の植物や観葉植物などに発生する「スス病」と呼ばれる疾病時のいわゆる「スス」状の糸状菌(Chalara paradoxa)を選択摂餌することが今回の飼育であきらかとなった.
飼育には,600×600mm,高さ800mmの水槽を用い,気温を22~28℃,湿度を60~90%に維持するよう努めている.本種を飼育して行く上では,餌の供給が最大の問題であったが,寒天培地での糸状菌培養の成功によって,餌の安定供給が可能となった.また,展示開始から約半年後の11月,12月には,水槽内で3回の繁殖が見られた.

6.アンボイナガイの飼育と捕食行動に関する新知見:○宇井晋介(串本海中公園センター)
アンボイナガイGastridium geographusは熱帯性のイモガイの一種で,イモガイ類中最強の刺毒をもつものとして広く知られている.串本海中公園センターは過去何度か飼育,展示した経験をもつが,いずれも短期の展示で終わっていた.昨年来このアンボイナガイを多数入手することができたので,その飼育展示に関し適水温活動時間,食性,捕食方法などについて幾つかの知見が得られた.
元来熱帯性の種であり,高水温を好む,採集時の海水温はおおよそ20℃前後であるが,飼育水温としては,22~26℃前後で最も活発に行動する.
本種は夜行性の貝であり,水槽中でも日没前から活動が活発になり,夜10時前後までが最も活発に活動する時間である.昼間はもっぱら砂中に潜在して動かないことが多いが,空腹時には餌の匂いに反応してよく活動する.
魚食性で,ハゼ類,イワシ類を特に好むが,ゴンベ類ベラ類,スズメダイ類など小型魚類なら無作為に捕食する.また死魚,生魚にこだわらない.
本種はユニークな捕食方法をとる.この捕食方法の観察の課程で,一部のアンボイナガイが自身の防を環虫類にみせかけて,獲物をおびき寄せるかのような興味深い行動をとることが観察された.

7.水槽内で観察されたモンガラドウシの産卵と孵化仔魚の育成:○杉村 誠,白井芳弘(あわしまマリンパー)
展示水槽(容量800c㎥)において,1998年7月28日と1999年10月2日にモンガラドウシOphichthus eraboが産卵した.産卵行動を観察し,孵化仔魚の育成を試みて若干の知見を得たので報告する.
産卵が近づくとメス(TL.685mm)の腹部は大きく肥大し,摂餌が止まる.産卵は夕方近くまたは点灯中の夜間に行われた.砂の上に頭部のみ出しているメスに,オスが近づきメスの頭部に吹端をこすりつける行動をとる.その後,オスがメスの頭部の後に噛みつきメスを口でくわえる.そのままオスは前進してメスを砂中より引き出し,メスをくわえたまま水面に向い遊泳し産卵が行われた.
卵は球形分離浮性卵で,平均卵径2.50mm,産卵14時間後に義胚期に達し,卵膜が膨張し平均卵径4.17mmに拡大した.孵化は110時間後より始まった.
孵化直後の仔魚は全長7.10mmで口は開いていない,孵化後2日目より口が機能し始めた.アルテミアの孵化幼生を与えたが摂餌を確認できなかったため,田中(1998)がウナギ仔魚に用いた練り餌の手法を用い,日本配合餌料社製の人工プランクトンBPと武田科学飼料社製のサメ卵粉末に海水を加えて練り,それを10㎖シリンジに入れて飼育容器の底に押し出して与えた.仔魚の摂餌は良好であった.孵化後60日目に最終個体が死亡した.この個体は全長16.65mmで上顎と下顎に長い犬歯状の歯があるプレレプトケファルス幼生であった.

8.ランプリクティスタンガニカヌスの産卵行動:○水野展敏(名古屋市東山総合公園事務局)
アフリカのタンガニイカ湖に生息する1属1種のランプリクティスタンガニカヌス(Lamprichthys tanganicanus)は,比較的大型で美しいメダカの仲間であるが,本種の産卵行動についてはあまり知られていない.そこで,水槽内で観察された産卵行動を報告する.
飼育条件は,120cm水槽を2/3に仕切った中で,水温24℃,pH8,GH1,KH1,照明時間12時間(7:30~19:30)として,成体1ペア(体長・雄60mm,雌55mm)を入れた,また産卵床として浅いプラケース(W260×D160×H40mm)に砂利を敷き,その上に3個の石を置いたものを使用した.
観察は1999年5月4日~11月6日の期間に26回行い,1回の観察時間は産卵床設置後15分間とした.また10日間産卵床を入れ,1日の産卵数を測定した.
産卵行動は,まず雄が産卵床に入って調べるような行動の後,雌に突進して側面誇示や回転行動を行った.その後,雄は再び産卵床に戻って小刻みに体を震わせた.雌は雄を見て産卵床に近づき,その中に入ると,雄は雌の側面に密着するように位置しながら体を震わせた.そして,雌も同時に体を小刻みに震わせながら石の下部に産卵した.1回の産卵では1卵ずつを産んだ,さらに,産卵床設置後に産卵したのは17回で,最初の産卵までは平均4分であった.また,10日間の連続観察では,1日の産卵数は0~12卵であった.

9.チューブスナウトの繁殖について:○藤井大地,三森亮介(東京都葛西臨海水族園)
チューブスナウト(Aulorhynchus flavidus)は,北米太平洋岸のアラスカ南東部からバハカリフォルニアにかけて分布するクダヤガラ科魚類である.本種の自然環境下での繁殖はLimbaugh(1962)により研究されているが,当園では,展示中の本種が1998~1999年にかけ水槽内で産卵し,繁殖に成功したので,その経過を報告する.
展示水槽は水量約2㎥(150×100×135cm),水温14.5℃前後で,水槽内には本種6~13尾のほか,カジカ科及びケムシカジカ科魚類を展示していた.水槽から取り上げた卵はウォーターバス方式にした300テンタルに収容し孵化,育成を行った.餌料は孵化当日からクロレラで栄養強化したブラインシュリンプを与え成長に合わせ,活アミ,サクラエビ等のミンチに切り換えた.
本種の雄は産卵に先立ち,分泌した糸状の粘液で海藻等を絡めて巣を作り,雌を産卵に誘うことや,果を保護することが知られている.水槽内では5月から翌年1月にかけ紅藻等に巣を作り,雌を誘い約26回の産卵を行った.また,これに伴い雄が巣を保護する様子も観察できた.卵は長径1.90~2.20mm,短径1.85~2.10mmの楕円形で一度に約100~150個が産まれ,卵どうしは互いに強く粘着していた.卵は約2週間で孵化し,孵化直後の仔魚は全長約7mm,孵化当日から摂餌を開始し,1カ月後に約30mm,4カ月後には100mm近くに成長した.

10.シロボシテンジクザメの人工授精による繁殖と成長:増田元保,○井澤好之(碧南海浜水族館)
碧南海浜水族館では,水槽内における過剰な繁殖や近親交配を防ぐため,繁殖コントロールを目的とした人工授精を試み,これまでにトラザメの人工授精に成功している.今回は,それを応用しシロボシテンジクザメで試みた.
人工授精による繁殖を行うにあたり,1993年より交尾を避けるため雌雄別々に飼育をはじめた.以降1998年までの約5年間受精卵を産卵していないことを確認し,1998年3月12日に人工授精を行った.親魚とフ化仔魚の飼育水槽はそれぞれ水量0.5㎥,卵の飼育は75ℓ水槽を用いた.飼育期間の水温は季節に応じて20.5~25.0℃になるように調整した.
人工授精の方法は,雄の腹部を押しシャーレに精子を採取し,採取できた約1㎖の精子を海水で10倍に希釈し,シリコンチューブを取りつけた注射器で雌の子宮内に注入した,精子採取から子宮内への注入までに要した時間は,約5分間であった.今回人工授精に用いた雄は全長680mm,体重760g,雌は全長866mm,体重2240gであった.
1998年3月12日から7月24日までに34個の産卵があり,その内12個が発生し7個体が孵化にまで至った.フ化日数は142~193日,平均158.3日であった.
孵化した個体は平均全長185.3mm,平均体重14.5gであった.1999年11月現在,3個体が生存し全長約470mm,体重300gにまで成長した.

11.オンデンザメの飼育例:古賀崇(小樽水族館)
オンデンザメ(Somniosus pacificus)はツノザメ目ツノザメ科に属する深海性のサメで,日本近海を含む北太平洋の水深2000mまでの水域に生息しているとされている.国内での捕獲例は稀で,詳しい生態は殆ど解明されていない.
平成11年4月19日,5月25日にそれぞれ1個体が北海道南茅部町沖(41°56'N140°58'E港より1mile水深:68m)に設置された大謀網で混獲された,北海道大学(以後北大とする)水産学部仲谷一宏助教授より連絡を受け,活魚輸送車(水量3.0㎥)で当館へ搬送した(実走4M).
最初の個体(TL:1750mm)は陸揚げ後,臼尻漁協所有のコンテナ(水量2㎥水温5.5℃)で流水にて畜養されていた.受け取り時外傷は殆ど無く,状態は良好と思われた.当館到着後,予備水槽(水量:12.8㎥)水温9.8℃)へ収容したが,翌日餌の吐き戻しがあり,その後摂餌が無いまま,7日後の4月26日死亡した.
2例目(TL:1610mm)は北大臼尻実験所にて5月25日より畜養(楕円形水槽:長径×短径×深さ=5.4×2.5×1.1m水量13.4㎥)されていた個体で,この間にイカ,サケ等の摂餌をみている.6月7日当館展示水槽(水量315㎥)に搬入したが,5日間の無摂餌が続き,以後強制給餌に切り替えた.しかし搬送時の擦過傷が悪化するなど現況での状態改善が難しいと判断され,同月16日に再放流した.
貴重な本種生体のビデオ映像を交え,2個体の飼育経過について報告する.

12.サメの臭覚および視覚に関する研究:矢野和成19)○増田元保(西海区水産研究所,碧南海浜水族館)
サメ類による被害の防止を目的に1996~97年の2年間,愛知県により「愛知県サメ生態等研究会」が組織され水産庁,東京大学,沖縄記念公園水族館ならびに碧南海浜水族館等が中心となり研究が行われた.この研究会では,サメの臭覚や視覚,電磁波や音波に対する逃避行動等の研究が行われた.今回は,サメの種の違いによる臭いの嗜好性や,視覚による誘因性や逃避性等について調査した実験結果と98年に行った追加実験の結果も含め報告する.
実験に用いた水槽は直径3m,水深60cm,水量約4.2㎥の円形シート水槽にツマグロ4個体TL525~698mm(♂2,♀2),ドチザメ6個体TL757~879mm(♂3,♀3),シロボシテンジクザメ2個体TL874mm,879mm(♀2),ネコザメ1個体TL970mm(♀1),イヌザメ1個体TL933mm(♀1)の5種14個体を収容して行った.実験時の水温は21.4~22.2℃の範囲であった.臭いの刺激物質として魚肉,貝,イカ,エビ,豚肉,鶏肉等12種の餌料を用いたところシロボシテンジクザメではサバ,イカに,ドチザメではエビ,アジ,豚肉に,ツマグロではイカ,サバに高い反応が見られた.容器の色に対してシロボシテンジクザメとドチザメでは顕著な差が見られなかったが,ツマグロでは白黒の縞模様に高い反応が見られるなど興味深い結果を得た.

13.イズヒメエイ,イズハナトラザメの飼育について:○萩原宗一,土屋泰久,鬼束かおり(下田海中水族館)
下田海中水族館では,イズヒメエイDasyatis izuensisとイズハナトラザメScyliorhinus tokubeeの採集,飼育展示を行っている,2種の①同定時に有効な外見上の特徴,②採集状況,③飼育状況について報告する.イズヒメエイ:①アカエイと混同しやすいが,尾部腹面の皮褐の色で容易に区別できる(アカエイは黒色,イズヒメエイは白色).②1989-1999年に伊豆半島南東部の沿岸(水深10-50m)から,主に底刺網漁・延縄漁で76尾採集(アカエイは220尾採集),成魚の体盤幅は雄37.2-41.8cm(N=4),雌36.8-66.0cm(N=3).③擦過傷,外部寄生虫により,半年以内の死亡が多いが,1個体は水量1㎥の展示水槽で1990年より飼育中で腸管反転行動も1例観察.1996年7月600㎥の水槽にて7尾を産出(持ち込み腹),仔魚平均生存日数112日(4-190日,N=6),死亡時の体盤幅15.0-16.4cm(N=6).飼育水温11-27℃.イズハナトラザメ:①体表に明瞭な小白点が散在する.②1985年-1999年に伊豆半島南東部の沿岸(水深40-100m)及び神津島沖(水深400-500m)から,主に底刺網漁で18尾採集,トラザメS.torazameの採集例はなし,成魚の全長は雄38.5-45.2cm(N=4),雌36.8-41.3cm(N=9).③0.5-1㎥の複数の水槽で飼育,水温10-16℃.1987年初孵化,交尾行動を3例観察.1999年までに54尾が孵化,平均孵化日数229日(N=12).仔魚平均全長8.5cm,平均体重2.5g(N=18),1991年に二世が産卵,翌年三世孵化.

14.展示用オニイトマキエイの研究-I-捕獲と形
態-:内田詮三,戸田 実,亀井良昭,○田中直美(国當沖縄記念公園水族館)
オニイトマキエイManta birostisはエイ類中の最大種であり,水族館にとって,高い展示効果を持つ種である.国営沖縄記念公園水族館では本種を館の重要な展示
魚の一つと位置づけ,1978年から飼育を試み,1988年より長期飼育に成功,一応,安定した目玉展示魚の一つとなった.今回は捕獲から飼育成功に至る過程で得た,捕獲と形態に関する知見について報告する.1978-1998年の21年間に17個体(雄8尾,雌9尾)を取扱い,12個体を搬入した.捕獲地別の個体数は沖縄本島15,伊江島1,石垣島1,捕獲方法は定置網14,刺網1,追込漁1,羅綱1であった.捕獲の季節は冬,春が多く,12尾(71%)が捕獲されているが,これが実際の回遊状況を反映しているのかは不明である.
捕獲個体の体盤幅・DW(cm),体重・BW(kg)の平均値と範囲は下記の通り(Mは雄,Fは雌),DW:平均320,範囲175-465(雌雄別・M:316,175-434,F:323,205465).BW:371,57.5-774(雌雄別・M:360,67.0-580,F:379,57.5-774).トビエイ科のエイ類のうち,日本で本種と混同され易いのはイトマキエイ属の3種,イトマキエイ,ヒメイトマキエイ,タイワンイトマキエイである.本種は口の位置が頭部前縁開口であるのに対し,上記3種は頭部腹面開口であり,頭部最大幅は本種が体盤幅の23-27%あるのに対し,他の3種は20%以下であり,この観察により本種との区別がつく.

15.「藤沢メダカの学校をつくる会」ネットワーク活動について:堀由紀子,横山芳浩,○植田育男(江ノ島水族館)
藤沢市内の学校で藤沢産メダカ(以下,藤沢メダカ)の飼育に取り組み,教材にするため,市内の小中学校教員を中心とした組織活動,すなわち「藤沢メダカの学校をつくる会」(以下,会)が1996年発足した,江ノ島水族館では水族館の立場からこの活動を支援し,さらに絶滅危惧種でもあるメダカに対する一般市民の啓発機会を作ることを目的とした.
会への支援として,藤沢メダカ種苗の飼育・繁殖会の運営委員会への参加,メダカ配布会やメダカサミットを共催した.館内外で藤沢メダカの展示・解説を行い,一般市民へ情報提供し,これらの人々を対象に「会PTA」を組織した.結果:当館は1997年3月に300尾の種苗を寄託され,毎年1000尾以上の繁殖実績がある.会の活動は運営委員会における協議に基づき進められ,藤沢市環境フェアーへ出展しメダカ配布会やメダカサミットを共催した.館内に120×48×56cmの展示水槽を設け,CD-ROM2000枚を作成し市立小学35校,中学19校,養護1校を始め教育関係機関や市民へ無料配布し,当館ホームページに紹介コーナーを開設し,情報普及に努めた.会の活動に対し市民レベルの支援を得るため1997年よりPTAを組織化し,97年250名,98年144名,99年107名がPTAとして登録され,全PTAが1人当たり藤沢メダカ8~10尾を無料配布され家庭内系統保存に努めている.
その結果1999年にはPTA6名より1634尾が当館に戻され,このうち1102尾は市内小学校校庭のメダカ飼育池に放流された.

16.サケ発生水槽の長期展示について:○遊佐清明(千歳サケのふるさと館)
千歳サケのふるさと館では,平成7年から毎年1月21日の再オープン時にサケの発生水槽としてサケの卵期,発眼期,ふ化期,仔魚期の4ステージをそれぞれ60cm水槽4基で展示している.展示期間はできるだけ延長するよう努力し,毎年更新され,5回目を迎えた平成11年は,一気に1ヶ月延ばす6月18日までふ化の瞬間を展示することができた.今回はその経緯について報告する.
サケ卵のふ化日数は受精からの積算温度(水温×日数)で表され,一般に480℃といわれている.当館では発生水槽用サケ受精卵を2.0℃,3.5℃,5.0℃,10.4℃の4段階の水温調節水槽で飼育している.1月から2月上旬までは10.4℃から5.0℃,3.5℃,2.0℃ヘ小分けにしたブロックでふ化を遅らせて対応,2月中旬から3月下旬までは3.5℃から5.0℃,10.4℃へとふ化を促進させて対応.4月からは2.0℃から3.5℃,5.0℃,10.4℃へとふ化を促進させて対応している.長期展示には早期2.0℃設定が有効であるが,受精直後からの設定では全数死卵となるため,発眼期(積算温度240℃)からの設定で対応してきた.平成11年は冷却機の故障により,平均水温10.4℃で9日間(積算温度93.6℃)の設定遅れが生じた.そこで,試験的に積算温度55.9℃,103.0℃の2ブロックで平成10年12月16日から早期2.0℃設定が開始された.この卵が6月14日まで発眼卵として残り,6月18日までの展示を可能にした.

17.小型水槽を用いたアマモの育成:○春日井 隆(名古屋港水族館)
海産の植物であるアマモを水槽内で育成展示することは,藻場という生態系を来館者に理解してもらうのに,有効な手段である.大型の水槽では,餌料の問題から展示することの難しいヨウジウオ科の魚類や,モエビ科の甲殻類などのアマモ場を代表とする生物の展示を目的に,小型水槽におけるアマモの育成を試みた.
水槽には60×45×45cmのガラス製水槽を用い,ろ過循環はポンプ内蔵型のパワーフィルターによる外部ろ過をおこなった.底砂にはアマモ場から採取した砂泥を用いた.育成条件は水温18±1℃,塩分濃度(S)26~30%とした.アマモの育成に必要な光源には,蛍光ランプ(18W×6灯)を用い,照度は育成開始時,底砂表面で7,000~9,0001xを確保することが出来た,光周期は12時間明期とした.1997年4月に採集した海アマモの幼苗20株を水槽に植え付け株の増加を観察した.
アマモは順調な成育が観察され,6ヶ月後には30株まで増加し,草丈もよく伸長した.8ヶ月目からこの水槽を用いて,サンゴタツ,ヨウジウオ,ツノモエビ,ヒメイカなどのアマモ場に生息する小型生物を同時飼育し,展示を行うことができた.

〔話題提供〕
18.特別展「ルアー水族館」について:○稲村 修(魚津水族館)
「ルアー」というのは魚を釣るための疑似餌で,最近では釣りブームも手伝って,色々な種類のルアーがたくさん作られている.魚津水族館では,ルアーにスポットを当てた春の特別展「ルアー水族館」を,平成11年3月20日~5月31日の期間,3階特別展示場(面積:約100㎡)にて開催した.
展示にあたってルアーメーカーなど約60社から,展示用およびプレゼント用のルアーの提供を受けた.また,一般から自作ルアーやルアーで釣った魚の写真の募集も行い展示した.展示に用いたルアーは合計1,100点余りで,展示は「いろいろなルアー」「昔のルアー」「日本のルアー」「ルアーを使ったジオラマ」「ルアーのモデルになった魚の水槽」「ルアーを泳がせる水槽」「ハンドメードルアー」「自作ルアー」「ルアーで釣った魚の写真」「ルアーフィッシング映像」などのテーマで行った.会場ではアンケートを実施し,抽選で200名にルアーをプレゼントした.また,ルアー・写真の応募者からは各5名を抽選した.
期間中の来館者は57,951人で,アンケート総数は4,328枚であった.ルアー水族館に関する意見は2,658件(重複回答を含む)で,「良い」とする意見が8割を超えた.内容では「楽しい・面白い・よかった」「色々な種類がたくさんあった」「キャラクター等,変わった種類があった」「ルアーを体験できた」という意見が多く,要望としては「実際に会場で魚を釣りたかった」が多かった.

19.クラゲ展示施設「ふあふあクラゲ館」の紹介:○小野真由美,村上寛之(大阪・海遊館)
大阪・海遊館では,平成11年7月16日にクラゲ展示施設「ふあふあクラゲ館」(以下クラゲ館とする)を設け,常設展示を始めた.
施設の概要は,総床面積289㎡,水槽数12基,総水量約11㎥,設定水温は17~25℃である.なお,展示水槽の内9基は,米国において主流となっているクレイセルと呼ばれる水槽を導入した.クレイセル水槽は,外周が曲線でクラゲの損傷を軽減し,クラゲ飼育にとって最も問題となる給排水口を考慮した円形水槽である.また照明は,クラゲを幻想的に見せる目的で,水槽の上部や側面あるいは底部からスポットライト,後部からは蛍光灯を点灯し,カラーフィルターや調光器も使用した.展示種は,ミズクラゲAurelia aurita,アマクサクラゲSanderia malayensis,アカクラゲChrysaora melanaster,ギヤマンクラゲTrima formosa,根口クラゲ目の一種Rhzostomae sp.,サカサクラゲ属の一種Cassiopeidae sp.,カブトクラゲBolinopsis mikado,チョウクラゲOcyropsis fusca,シーネットルChrysaora quinquecirrhaの9種約350点である.
クラゲの飼育状況は現在に至るまで概ね良好であり,照明の工夫により展示効果を高めることができたので,その詳細を報告する.

20.移動水族館の実施例について:○二見武史,三橋孝夫(サンシャイン国際水族館)
サンシャイン国際水族館では1983年より,周辺に水族館のない地域を主な対象として,年1~2回移動水族館を開催してきた.これは各地方自治体や百貨店などが主催するイベントに10~20日間ほど,水槽数35~45槽,約60種500点の生物を出展するものである.水槽は幅1,200~2,000mmの加熱・冷却ユニット付水槽を15~18槽,幅300~750mmの水槽を20~25槽使用している.会場の設営には3~4日,撤去には2~3日を要し,8名ほどの人員で行なっている.
開催約1ヶ月前には展示内容の一部を告知し,集客および話題の提供も行なっている.これまでに実施した主な地域は郡山市,宇都宮市,長野市などである.
展示手法は,会場を熱帯雨林域,マングローブ域,サンゴ礁域のコーナーに分け,各水槽に擬サンゴや擬岩植栽を多く使用して来館者が自然環境と生物について理解しやすいように努めている.このほか毎回,クリオネやペンギンなど話題性の高い生物や特異性のある生物.両生爬虫類の展示,標本や模型を用いた解説も行なっている.
各地での入場者数は,40,000~50,000人にものぼる.また海から離れた山間部や,周辺に水族館のない地域.すでに実施した地域からも今後の開催を依頼されている.これらのことから移動水族館が好評であることが伺「え,また少なからず教育普及へ貢献できたものと思われる.

〔ポスター発表〕
21.ユキフリソデウオの形態的変化:○星野和夫(マリーンパレスく大分生態水族館)
ユキフリソデウオZucristatus(アカマンボウ目フリソデウオ科)は全世界の暖海域に分布する稀種で,成長段階によりその体形が著しく変化することで知られている.演者は大分県の魚類相調査の過程で,大分県杵築市地先(1998年8月14日),同県南海部郡鶴見町漁港内(1999年1月4日),および同県杵築市地先(同年4月18日)において,合計3個体のユキフリソデウオを採集した.さらに東シナ海より得られた標本2個体を加え,合計5個体を比較した.
これらの標本の体長はさまざまであり(標準体長149.1600.0mm),本研究において,(1)本種の背鰭軟条起部は成長に伴い,眼窩の前部から後部へ移動する(2)本種の腹鰭基底部は,少なくとも体長149.1mm(三重大学生物資源学部附属水産実験所FRLM:Fisheries Research Laboratory,Mie University16220)からほとんど伸長しない(3)本種の腹鰭基底から肛門にかけての腹縁形状は,成長に伴い波形状からほぼ直線状になる(IIeemstra&Kannemeyer,1984etc.)(4)本種の腹鰭軟条部の房状鰭膜は,少なくとも体長149.1mm(FRLM16220)では存在する(Palmer,1961),という観察結果が得られた.
また,本研究での観察結果からYamakawa(1982)およびShimizu(1983)に「ユキフリソデウオ」として記載された個体とは形態が大きく異なっていたため,これらの個体が別種である可能性が示唆された.

22.硬骨魚類における甲状腺腫例:○荒幡経夫,野田友行,遠藤智子(しながわ水族館).
飼育水槽中のヨウ素不足が原因で,甲状腺組織が腫瘍化していく事は,板鰓類において1982年に上野動物園水族館内田等からの報告例があり,古くから良く知られ研究されてきた.反面,硬骨魚類の症例は,技術者研究会でも報告例はなく,勿論その予防例もない.
しながわ水族館では,展示中の,シマアジ(TL:60cm,6年飼育)マダイ(TL:50cm,8年飼育)クロホシイシモチ(TL:8cm,2年飼育)の口腔内咽頭部に腫瘍様の病変部を認めた為,シマアジは1996年3月,マダイは1998年2月,クロホシイシモチは1998年3月に死亡魚からサンプリングして病理検査に出してみた.病理組織学的診断では,濾胞上皮細胞の変形やリンパ球の浸潤.コロイドの減少が認められ,濾胞状甲状腺癌(甲状腺腫)であることが判明した.
甲状腺腫発生予防対策として,飼育水槽へヨウ素を補給している.1997年12月から0.04ppmの濃度で,1999年10月から0.05ppmの濃度で週1回ヨウ化カリウム溶液の添加を実施している.サンプリングして検証していないが,観察している限りでは板鰓類同様に病魚の発生が押さえられているように見受けられた.

23.須磨海岸における過去3年間の潜水調査で確認された魚類について:○大鹿達弥(神戸市立須磨海浜水族園)
須磨海浜水族園に面する須磨海岸において,当園はこれまでに潜水採集などを行ってきた.しかし,採集された魚類に対しては記録してきたが,その他のものに関しては明確な記録が残せていないのが現状である.そこで,須磨海岸に生息する魚類を的確に把握すべく,水中における撮影を定期的に行った.
水中撮影は,1996年の2月より1999年10月まで月2回程度行った.潜水範囲は須磨海岸に隣接するヨットハーバー岸壁部分周辺の潜水深度12m以内の地点と限定した.撮影はカメラ及び,ビデオカメラの2種を用いて行った.
現在までに,940科72種の魚類の撮影が行われた.これらの魚類を下記の4つの区分に分類した.
1.ほぼ周年確認された魚 計48種
2.初夏から秋の高水温期に一時的に確認された種 計12種.
3.これまでの本調査において偶発的に遭遇した種 計7種.
4.その他 計5種
今回の結果により,採集困難な魚類に対する潜水撮影が有効であり,今後もこの調査を継続することにより,須磨海岸に生息する魚類がより明確になっていくものと考えられる.

24.のとじま臨海公園水族館に搬入された後鰓類について:○那須田 樹(のとじま臨海公園水族館)
のとじま臨海公園水族館では,開館以来能登島近海で収集された後鰓類の飼育展示を行っている.1997年1月より1999年11月にかけて収集した後鰓類について,その出現水域・時期について調査したので報告する.
収集は当館地先である七尾北湾を主とした能登島全域にわたる沿岸水域での潜水採集と富山湾に面した能登島東岸地区の漁業者からの収集により行い,その結果を整理集計した.
調査期間中に確認された後鰓類は42種678点であった.その内,当館の地先水域ではエムラミノウミウシ・ヒカリウミウシ・クロシタナシウミウシ・シロウミウシなど28種299点が確認された.富山湾沿岸水域では他水域では確認されなかったコモンウミウシ・シラヒメウミウシ・ジボガウミウシを含む13種242点が確認された.当館地先水域ではエムラミノウミウシは2月~3月に,ヒカリウミウシは4月に,クロシタナシウミウシ,シロウミウシなどは8月~11月にかけて多く出現した,収集した種については水槽にて飼育し各種ごとの餌料及び初期生態の解明に努めている.
本報告では,各水域での出現種と時期について報告するが,今後本資料を基にさらに能登島近海での後鰓類について調査する予定である.

25.園内でのビオトープ(水草池)の創出:○佐野 修(いしかわ動物園)
いしかわ動物園の移転新築にあたり,失われつつある郷土の水辺の自然を再現,展示する「郷土の水辺館」を立案した.展示テーマとして,河川のほかに,潟,池・沼,田園の小川,湧水の小川などをあげた.一方,新園の近郊で展示動植物の生育・生息調査を進めた結果,動植物共に在来種の減少が明らかとなった.特に水生植物は深刻な状況で,アサザとガガブタは1潟湖,クロモとバイカモは2水系でしか認められなかった.そこで,園の中央に位置する調整池の上流部に,希少となった在来の水生植物の種と系統の保存をめざして水草池を設けた.
平成11年9月26日に造成工事が完了,同28日にアサザなど13種の水生植物を植栽した.池は雑木林に挟まれた小さな谷にあり,幅約10m,長さ約53mで4面に区切られている.堰部分だけは玉石を積んだが,他は全て土の素掘りの池である.崖下から滲出する地下水を水源としている.
植栽した水生植物は少量で見た目には疎だが,本来どこにでも見られた植物であり,1・2年で繁茂状態になると考えている.そして,造成間もないにもかかわらず,野鳥のヤマガラ,エナガなどが遊動し,トンボ類の飛来も多い.その他にも多くの生物がここを利用し始めている.12年春には北陸では稀となった淡水魚のホトケドジョウを放ち,増殖を計る予定である,希少種の保存を計りながら,ビオトープとしてどのような機能を果たすか.記録をとり見守っていきたい.

26.志摩マリンランドにおける教育普及的活動:○佐野 淳,里中知之,川辺良一(志摩マリンランド)
動物園,水族館は環境教育や人間と自然の共存を広く考える窓口として適切な場所と考えられる.当館では生き物の不思議さを学ぶ方法として1997年7月より参加型写真展示や間近にペンギンを見せたりして現在に至っている.
1.裏方探検特別展期間中(毎日午前10時半より;先着20名).
2.ペンギンタッチ特別展期間中(土・日・祝日午後2時より:先着30名).
3.写真展野生地のペンギンをパネルで紹介.写真約40点.
4.ペンギンお遊び1999年7月より毎日2回;午前10時15分,午後2時45分.
1と2については開始以来1999年12月末迄で各々3729人,2816人が参加し,特に夏季は多く,各々全体の49%,34%を占めている.3はペンギンの野生地を知り,南極以外でも生息していることを促す,4は水中を速く泳ぐ姿に興味を抱かせる.このように参加型を工夫し,来館者の関心を高め,生物知識の発信場所として楽しく学べることに努めたい.

27.琵琶湖博物館における展示交流活動について:○岡田 隆1),桑村邦彦2)(1)宮津エネルギー研究所水族館,2)滋賀県立琵琶湖博物館)
琵琶湖博物館では,平成10年度より水族展示室において飼育員による展示交流活動を行っている.主な交流活動として,チョウザメやガーパイク類が泳ぐ古代魚水槽とナガレヒキガエル水槽での解説給餌,およびトンネル水槽(水量約450㎥,水深6m)での水中通話装置を用いてのダイバーと来館者との対話・水中実験・魚の生態の解説などがあり,それらを毎月数回行っている.古代魚水槽での解説給餌では,ヘラチョウザメのめずらしい摂餌行動を中心に,チョウザメと海産のサメとの相違点や飼育方法,剥製を用いて形態についての解説もおこなっている.また,トンネル水槽における潜水交流では,ダイバーと展示交流員の対話を中心に潜水清掃の方法,魚への給餌,空気の入ったボールを使っての水圧の説明等をおこない,来館者からの質問をダイバーが水中から答えている.これらの交流活動には毎回多くの参加者があり,わかりやすいと好評を得ている.また,この他にもトピック水槽においてその時々に産卵する魚やふ化した稚魚などを飼育担当者が解説している.これらの交流活動の狙いは常設展示では知ることのできない魚たちの様々な生態やめずらしい摂餌行動などについて来館者に興味をもってもらい,より生物に対する理解を深めてもらうことにある.今回は上記の展示交流活動の内容について紹介する.

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